第4章 原作編《体育祭》
轟SIDE
「それ…緑谷にも言われたな。あいつ、無茶苦茶やって他人(ひと)が抱えてたもんブッ壊してきやがった。幼馴染なんだってな。昔からあんななのか?緑谷は…」
「あんなクソナード…どうでもいいんだよ!!ウダウダとどうでもいんだよ…てめェの家事情も気持ちも…どうでもいいから、俺にも使ってこいや炎(そっち)側。そいつを上から捩じ伏せてやるーー…治癒女泣かせてんじゃねえよ」
「…え?」
捨て台詞を吐いてそのまま爆豪は控え室を出て行ってしまった。
治癒女とは一体誰の…と考えて、身近に治癒を使うのはリカバリーガールか彼女しかいない。
リカバリーガールが泣いたと言うのは…あり得ないと思うから、きっと彼女の事をいっているのだろう。
(泣かせた?…俺が…?)
確かに試合前に泣いている姿を見たが、あれは俺が泣かせていたのだろうか。
その時はそこまで考えていなかったし、考えられなかった。
試合の事で頭がいっぱいだったのだ。
それに何故爆豪が、俺が泣かせたと言っていたのだろう。
まさかあの時に見られていたのだろうか。
いや、あの場には他に誰もいなかった筈だ。
ならば、いつ?
(俺の知らないところで、泣かせちまってんのか…?)
彼女を守る為にと思って離れはしたが、あれから一年以上も経つのに、未だに俺の事で泣かせているのかと思うと、その選択をした事も正しかったのかわからなくなってくる。
それに、USJで倒れた時に言っていた言葉がずっと気になって頭から離れずにいた。
(俺の事を今もまだ気にしてるってんなら、離れる事で断ち切るなんて出来てないんじゃねぇのか?)
自分自身も忘れる事が出来ず、あの言葉で更に抑えきれなくなっている想いがここにきてまた大きくなってしまっている事を自覚していた。
(このままで本当にいいのか…?)
そろそろ試合が始まるというのに、自分がどうするべきか、正しいのかどうか、わからなくなってしまっている。
しかし時間は待ってくれず、頭の中の整理がつかないまま、俺はステージへと向かう為、控え室を後にした。
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