第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
お互いにもう体力も気力も限界に近いんだと思った。
それでも、勝つ為に立ち向かっている。
そんな中、緑谷君の言葉を聞いて様子が変わっていく轟君に、何故か胸が騒つく思いがした。
「親父をーー…」
「君の!力じゃないか!!」
次の瞬間、熱気がここまで届く程に燃え上がる左側の炎が目に飛び込んできた。
《これはーー…!?》
「使った…!」
「…左の、炎…」
その炎は過去に見た左手に纏っていたソレと同じモノの筈なのに、こんなに轟々と燃え盛る様を見るのは初めてで、まるで違う炎の様にも感じる。
そして、私の目からは涙が零れ落ちていた。
「勝ちてぇくせに…ちくしょう…敵に塩送るなんて、どっちがフザけてるって話だ…俺だって、ヒーローに…!!」
「ーー…!!」
「焦凍ォオオオ!!!やっと己を受け入れたか!そうだ!!良いぞ!!ここからがお前の始まり!!俺の血をもって、俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!!」
《エンデヴァーさん急に"激励"…か?親バカなのね》
遠くの方で誰かが叫んでいる声がしたけど、今の私はそれを気にしている事なんて出来なかった。
「……」
「凄…」
「何笑ってんだよ。その怪我で…この状況でお前…イカレてるよ。どうなっても知らねぇぞ」
暖められたお陰で霜が完全に消えた右で再び大規模な氷結を放った。そして、それに合わせるかの様に左の炎を被せて放つ。
騎馬戦で一瞬見た時はただ驚くだけだったけど、この時の私は、右の氷と左の炎が本当に綺麗で、またしても心を奪われてしまった。
やっぱり、何度だってそう想うんだよ。
(焦凍君の"個性"はとても綺麗で……好き…)
零れ落ちた涙が止まる事はなく、寧ろどんどん溢れ出てくる。
まるで、今の私の感情みたいに。
「緑谷、ありがとな」
そして、ステージでは大爆風が起きた事により物凄い煙幕に包まれていた。
「何コレェエ!!!」
「威力が大きけりゃ良いってもんじゃないけど…すごいな…」
《何今の…おまえのクラス何なの…》
《散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ》
《それでこの爆風て、どんだけ高熱だよ!ったく何も見えねー。オイこれ、勝負はどうなって…》
「っ〜〜…!」
「!!」
「緑谷くん…場外。轟くんー…三回戦進出!!」
こうして、二回戦一戦目の試合は終わったのだった。
.