第2章 中学生編
紫沫SIDE
家の場所を聞かれてからは終始無言のまま歩き続け、あっという間に家の前に着いて。
別れの言葉と再度お礼を述べると私の夢は呆気なく終わってしまったのだった。
(でも、名前知ってもらえて良かった)
見つめるだけの日々を過ごしていた私にとって、彼と言葉を交わせたという事実が何より嬉しかった。
近くで見てもやっぱり整った顔立ちをしていたな。とか
想像してるよりも口調が悪かったな。とか
声もかっこよかったな。とか
頭の中が彼のことでいっぱいになっていく最中、ふと携帯の通知に気が付いて。
数時間前に幼馴染からのメッセージがきていたようで、慌てて返信するとすぐ様電話がかかってきた。
『もしもし!大丈夫なの!?すっごい心配したんだからね!』
「ごめん!通知に気付かなくて…もう大丈夫だよ!心配かけてごめんね」
『いや、私がもっと早く声かけていれば良かったんだけど…でも、今回はすぐ目覚めたみたいで安心した』
華純は私のキャパオーバーのことを知っている唯一の友人なのだ。
「そう言えば、いつもなら次の日とかに目が覚めるのになんでだろう?」
『そうか、紫沫は意識なかったから知らないんだよね。たまたま近くにいた紅白頭君の"個性"で体温を上げてもらったんだよ』
「…え?」
てっきり運んでもらっただけだと思っていたのに、まさかそんな事までしてくれていたとは…
(だから、あの時手を握ってくれていたのかな?)
と、目覚めた時の事を思い出し、今更ながら鼓動が少し早まるのを感じた。
『それで、あの後どうなった?暫く目覚まさないだろうと思って先に帰っちゃったんだけど…』
「あ…えっと……家まで、送ってもらいました…」
『え?まさか、それって…紅白頭君に送ってもらったの!?』
私のことをよく知る彼女だからこそ、そんな展開になっていたなんて想像もしていなかったのだろう。
思わず携帯を落としそうになる程の大声で驚かれた。
確かに、私も夢なんじゃないかって思う位だから本来ならあり得ないようなことなのだ。
「そ、そう…轟君に送ってもらったの…まぁ、先生からそう頼まれたからなんだけどね」
ただ、変な誤解を生まないように、決して自発的にではなく。
あくまで頼まれたからということを念押ししておいた。
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