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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第2章 中学生編


紫沫SIDE


(あぁ…どうしよう…)

あの後、既に下校時間を過ぎていたらしく急いで帰り支度をして、言われた通り家まで送ってもらうことに。
一方的に知ってはいるものの、自分にとっては色々とハードルが高すぎる状況も相まって無言の時が流れていた。

(そういえば、まだちゃんとお礼を言えてない。と言うか、先ず名前すら名乗ってない!)

せめてお礼だけでも言わなくてはと、半歩前を歩く彼に声をかける為勇気を振り絞って。

「…あっ、あの!」

無言のままこちらに振り返る彼と目が合い一瞬ひるんでしまうも、今一度勇気を奮い立たせ言葉を続ける。

「…っ保健室まで運んでくれて…ありがとう…!」

一瞬目を見開いた彼を見て、思いの外声が大きくなっていた事に気付いて恥ずかしくなり、視線ごと頭を下に向けた。
少しして頭の上から声が聞こえてきたことで、恐る恐る顔を上げると。

「…別にそんな大したことはしてねぇ。気にするな」

そう告げると彼はすぐに前を向き再び歩き始めて。
それを追いかけなくてはと思うも、彼の背中を見つめたまま私はその場から動けずにいた。
一方的に想いを寄せるだけだった彼が目の前にいて、目線を合わせ言葉を交わせたということが信じられなくて。
もしや自分は今夢を見ているのではないのだろうかと思えてくる。

(もし夢だとして、もう少しだけ…)

二度とこんなチャンス巡ってこないかもしれない。
それならば、せめて名前だけでも告げたいという気持ちが溢れ、私の口は無意識のうちに彼を呼んでいた。

「轟君!」
「…なんだ?雪水」
「え?あれ?名前どうして?」
「先生がそう呼んでたからな…違ったか?」
「雪水です…」
「…お前こそ、なんで俺の名前知ってんだ?」

墓穴を掘った…
まさかそんな返しがくるとは想定外だ。
確かに、会話するのも始めてなのに名前を知っているのはおかしい。
どう返すべきか考えあぐねていると。

「…まぁ、同じクラスなら知っててもおかしくねぇか。席が隣だったな」

その言葉に耳を疑った。
まさか、そこまで気付いているとは思ってなかった。

「気付いてたの…?」
「名前は今日初めて知ったけどな」

そういうと、彼はまた前を向き歩き出す。
未だに夢のようだと思ってはいるけれど、今度こそ私もその背中を追いかけ歩き出した。



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