第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
画面に映し出された種目は障害物競走だった。
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周役4km。我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ、位置につきまくりなさい…」
皆がスタートゲートへと進んでいく。
見学の私が参加するのはここまでだから、もうここに用はない筈なのに、どうしても後少しだけそこにいたかった。
皆の応援をしたい気持ちもあるけれど…どうしても…声をかける事は出来ないから、せめてここで見送りたい。
(轟君…頑張って…!)
そう心の中で呟いたのとほぼ同時に、
「スターーート!!」
睡さんの号令の声が競技場に鳴り響いた。
一斉に走り出した1年生は外に出る為の通路で大渋滞を起こしている。
と、その時、心地のいい冷気が私の頬を掠めた。
「最初のふるい」
(轟君の、"個性"だ)
ゲートから通路の外側まで、一気に氷が張り巡らされる。
「ってぇー!!何だ凍った!!動けん!!
「寒みー!!」
「んのヤロオオ!!」
(やっぱり、凄く綺麗…応援してるよ、轟君)
直ぐに見えなくなった後ろ姿を暫く見つめて、私は今日お世話になるリカバリーガールの元へと向かった。
《さーて実況してくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!》
《無理矢理呼んだんだろが》
競技場を離れて行く間は、聞こえてくる実況に耳を傾けた。
《さぁいきなり障害物だ!!!まずは手始め…第一関門。ロボ・インフェルノ!!》
その声に私は慌ててスクリーンに目を向ける。
『入試ん時の0P敵じゃねえか!!!』
『マジか!ヒーロー科あんなんと戦ったの!?』
『多すぎて通れねえ!!』
(えっ、ヒーロー科の一般入試ってあんなのと戦うの!?私が受けてたら確実に落ちてた…)
今更自分が雄英高校ヒーロー科にいる事がどれ程凄い事なのかを実感する。
『一般入試用の仮想敵ってやつか』
スクリーンに轟君の姿が映し出されたのを見て、直ぐ様意識をそちらへと向けた。
あの、巨大ロボを目の前にして一切怯む事も迷う事もなく対峙している姿に思わず格好いいなんて思ってしまう。
けれど、轟君の目つきが変わった事に気が付いた。
『クソ親父が見てるんだから』
そして、一瞬にして巨大ロボは凍らされてしまったのだ。
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