第4章 原作編《体育祭》
紫沫SIDE
そのまま廊下を歩きながら話を続けた。
「心操君はCって事は普通科かな?そう言えば、あの子猫どうなった?」
「…あの後すぐにどっか行ったけど…なァ、あんたさっきの話聞いてたんだろ?」
「え?…あ、教室の前で何か言ってたね?」
「…何で声かけてきたんだよ」
「あの時名前聞きそびれちゃったし、また会えたから名前くらい知りたいと思ったんだけど」
「……変な奴」
「そうかな?んー、何でか心操君の事が気になったんだよね…何でだろう?」
「…俺が知るわけないよ」
「それもそうだね」
そこで一旦会話は途切れた。
そして、そのまま宛もなく廊下を歩いてることに気が付く。
「そう言えば、これって何処に向かってる?」
「は?あんたが移動しようって言ったからついて行ってるんだけど」
「あ!ごめん!行き先何も考えてなかった!あの時は取り敢えずあの場から離れたかっただけで…えと、私はもう帰るんだけど心操君は?」
「用がないなら帰るけど…」
「鞄…はないから一旦教室戻る?なら、私はこっちだからもう行くね?」
「…一体何がしたかったんだよ」
「さっきも言ったけど、名前知りたかったのと何となく気になって声かけただけで、特に用がある訳じゃないから気にしないで?呼び止めてごめんね!それじゃあ!」
そう言って、私は下駄箱の方へと歩き出した。
「……本当、変な奴」
心操君がボソッと言った言葉は私にはもう聞こえなかった。
にしても、何で気になったのか自分でもわからない。
本当に、何となく、何となく…
(…轟君に似てる気がしたのかな……)
無表情だけど、子猫を助ける位優しいところがあって、そう思えば宣戦布告とかしちゃう位敵対心も強くて…
(だから、気になった…?)
…でも、やっぱり、似てない。
轟君はもっと暖かくて、ちょっと天然なとこがあったり、たまに見せてくれた笑った顔が凄く好きで…
そこまで考えて思考を止めた。
あの日から気付かないうちに自分の中でこれ以上考えると苦しくなるからと勝手にストッパーが働くようになっていた。
(それに…心操君は無表情なんじゃなくて、あまり感情を表に出さないようにしている感じがしたな)
そう考えて、やっぱり全然似てないやと、何だかスッキリした気分になっていた。
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