第1章 始業式の日
ピンポーン
何度も聞いた呼び鈴の音だけれど、いつまでたっても聞き慣れることはない。
反射的に布団に潜り込んでしまった。
母が呑気に返事をする声が聞こえてくる。
布団に潜り込んでいるから何を話しているかは聞こえないけど、母は誰かと話しているようだった。
学校の先生じゃないと良いけど......。
そんなことを思いながら、時間が過ぎるのを待つ。
不登校になり始めたとき、家にはよく先生が来ていた。
中学を卒業してもそれは同じで、高校に入学して何ヶ月かの時は、頻繁に学校の先生が私の家を訪れていた。
こっそり誰が来たのか帰り際窓から覗いてみたりもしたが、それは学校に行っていない私にとっては全く知らない人で、後から母に聞くと、担任の先生と養護の先生が交互に来ているらしい。
頭と後ろ姿しか見ていないけど、無意識に会いたくないと感じていた。
今日も来るかもしれないとは思っていたけど、本当に来るとは思っていなかったから、少し驚いた。
ぎぃぎぃと木の軋む音がする。
誰かが階段を登ってきているのだ。
母かもしれないと一瞬思ったが、一人が階段を登るような足音じゃなかったから、誰が一緒に階段を登ってきているのか、なんとなく察した。
でも、部屋にあがってくるなんてことは今までなかったはず。
布団をぎゅっと握りしめて足音が消えることを願った。
その足音は、私の部屋の前で止まった。