第1章 始業式の日
「あれ。私、出席番号何番だっけ...」
なんとか健診のために来たは良いものの、出席番号がわからずあたふたしている私。
とても痛い視線を浴びて、ものすごく気まずく恥ずかしかった。
と、その時。
ダダダダダ
階段を慌てて駆けおりるような足音が、近くから聞こえてきた。
振り返ると、今まで生きてきた中で文句なしで一番綺麗な顔立ちをした男の子が、私たちのクラスに向かって歩みを進めている。
少し小柄だけど存在感はとてもあって、モデルさんかなにかかと一瞬思ってしまったくらいに、他の人とは違う不思議な雰囲気を身に纏っていた。
こんな子、うちのクラスにいただろうか。
何度かクラス写真や学校のHPで自分のクラスを見たことはあったが、見かけた覚えがない。
前からいたのであれば、今までなぜ気付かなかったのか不思議なほど。
担任の先生が彼に「おい山田、いくらなんでもトイレでこの時間はないだろう」と、半ば呆れたように言っていた。
「すいませーん」
そう言って彼が自分の列に入ろうとしたとき、たまたま列と列の間にいる私と目があった。
彼は優しく微笑むと「もしかして川西さん?」と穏やかな声色で尋ねてきた。
「なんで私の苗字...」
「あー、出欠とるときに川西は今日も休みか、ってよく言ってるから」
私が学校に行っていない間はそんな感じなのかと、少し恥ずかしくなったが、こんな美男子に名前を知られていることは少し嬉しかった。
「川西さん、自分の場所わかんないの?」
小さく頷くと、彼はどこだっけと列をキョロキョロと見回す。
少しして、ここだと思うと誘導してもらった。
前にいるクラスメイトに多分そうだよな?と確認すると、ここだよと、私ににこやかな笑顔を向けた。
先生は自分の列に入れよ、しか言ってくれなかったし、他のクラスメイトだって何も教えてくれなかったからこそ、余計に彼がカッコよく見えた。
自分の列に入る時に私に向かって浮かべた無邪気な笑顔のせいで、私は苗字しか知らない彼に、恋に落ちた。