第1章 始業式の日
駐輪場に自転車を置いていくと、登校してくる生徒たちと一緒に昇降口まて向かう。
昇降口は1年も2年も3年も同じ場所だから、見覚えのない人がいても特に視線を送ってこなくて、ものすごく簡単に馴染むことが出来た。
昇降口前は、多くの人でごった返していた。
そこで、今日がクラス発表の日だったことを思い出す。
ここで、長年人の波というのにもまれてこなかったツケが回ってきた。
さすがに人口密度が高すぎて、気持ち悪くなりそうだったから、そそくさとその場を去る。
私が向かったのは、正面玄関。
校内に保護者の方や別の学校の人が入るときに使う玄関なのだが、私の場合は特例だと思って勝手に使っている。
別にそこを使っているのを見られてもなにも言われないし、多分問題ないんだと思う。
正面玄関から入って靴についた土を軽く払うと、こんなことがあろうかと一応持ってきておいたビニール袋に入れる。
クラスもわからないから、どこにも行きようがないのでどうしようかと考えていると、正面玄関から誰かが入ってきた。
「あれ、もなさん?」
聞き覚えのある声に振り返ると、今朝の先生____伊野尾先生がいた。
朝と同様、先生は私を見て柔らかく微笑んだ。
「来てくれたんだね、ありがとう」
そう言って、先生は私の頭を何度かぽんぽんと優しくたたいた。
その手はやっぱり女の私よりも大きくて、男の先生なんだと改めて実感した。
顔は私なんかの何倍も可愛いのに、男なんだから、不思議で仕方がない。