第14章 Orecchini【アバッキオ】
バタン、という音を立てて扉が閉まる。
次にどうするかも考えないままアジトを出たチヒロは、ふうと息をついて立ち止まった。
もう1度今日来た道をなぞってみようか、等と考え始めた時、突如ポケットから着信音が鳴り響いた。慌てて携帯電話を取り出して通話ボタンを押す。
「はい。ブチャラティ、どうしたの?」
「チヒロ、今いいか?すまないが至急調べてほしい事があってな」
こうして、つい今しがたついた小さな嘘は現実になってしまった。
結局その日は落とし物を探すどころではなく、リーダーからの依頼のために方々走り回る事になった。
翌日。
チヒロは玄関扉が開く音ではたと目を覚ました。
昨日の"調べもの"は予想以上の難敵だった。日中は情報収集のためにあちらこちらへ出向き、その後深夜まで作業していた彼女は、最終的にアジトのテーブルに突っ伏して眠りこけてしまったのだ。
やだ、私ったら…!
目の前に開きっぱなしのPCを確認すると、幸いにも作業は全て終了していた。
それで気が緩み、眠ってしまったのだろうか。
自分の単純さに苦笑する。
ああ、誰にも見られなくてよかった。
ふぅと胸を撫で下ろした時だった。