第11章 Ubriacone【護チ】
「───待ってください、ブチャラティ。何か勘違いしているようですが…チヒロが1番好きなのが貴方なのかどうかは、まだ分からないと思いますよ」
「なに?」
「そ、そうだぜッ!"大好き"っつーのはここにいる全員が言われてるんだ!立場は同じだぜ!」
横からミスタも声を上げる。
余裕の態度を崩さなかったブチャラティだが、僅かに眉をしかめた。
「…チヒロの態度を見れば、1番が誰なのかは一目瞭然だと思うが?」
「いや、ブチャラティ。やはり彼女の言葉が無ければ、それは100%信頼できる情報だとは言えないと思います」
「フーゴの言う通りだぜ。コイツが実際に何て言うか、それが重要だ」
「そーだよッ!こうなったらさあ、直接チヒロに聞いてみようぜ〜ッ!」
この状況をひっくり返そうと、全員がかりでの援護射撃が止まらない。
リーダーは小さく溜め息を吐く。
…仕方がない。この場を収めるには、彼女に尋ねてみるしかなさそうだ。
"この中で1番好きなのは、誰か?"と。
「いいだろう…お前達がそこまで言うなら、ここでハッキリさせておこう」
今のチヒロなら、ストレートに尋ねても間違いなく正直な気持ちを答える筈だ。
自信はあった。彼女に1番好かれ、慕われているのは自分だと。
ずっと抱えたままだった彼女を見下ろす。
「チヒロ。…………チヒロ?」
固唾を飲んで見守るメンバー達に聞こえてきたのは、
「………すー…」
すっかり満足した様子で夢の中へ旅立った彼女の寝息だった。