第9章 prego【ナランチャ】
「なんだ、そうだったの!よかった、私1人だけこんなに怖がってるのかと思ってたんだけど…ナランチャもだったのね。
そうよね、アレ怖かったわよね、私が特別怖がりな訳じゃあないわよね」
布団の中で、何やら1人で納得している。
その解釈には若干異議を唱えたくもあるのだが…なんだかホッとした様子の彼女に水を差すのも悪い気がするし、何よりこれ以上うまい理由づけが思いつかない彼は黙っていることにした。
「じゃあ私も、少しはナランチャの助けになれてるって事かしら?」
ぽふん、と再び枕に顔を埋めたチヒロは、彼を見上げて嬉しそうに微笑んだ。
あまりに素直に笑うものだから、目が離せなくなってしまう。
見惚れている自分に気づいたナランチャは、慌てて毛布を引き被った。
「…まあ、そーゆーコトにしといてやるよ。とにかく早く寝ちまおうぜ!おやすみッ」
「ふふ、おやすみ。……今日、ナランチャが居てくれて、本当によかった。ありがとうね」
ああもう、今日は調子が狂いっぱなしだ。
さっさと寝てしまおう。
こんな事で動じてちゃあダメだ。
胸の辺りがじんわり温かくなるのも、顔が熱いのも、彼女の言葉のせいなんかじゃあない。
顔まで毛布に埋まった彼は、ぎゅっと強く目を瞑った。