第7章 Saluto【ジョルノ】
はあ。
チヒロの唇から、大きな大きな溜め息がひとつ。
伏し目がちに頬杖をつく彼女だが、実は数日前からもうずっとこんな状態だ。
理由は、アバッキオに言わせれば"生意気な"新入りにある。
あの、ジョルノから突然距離を詰められた瞬間。
あの時から、どうにも彼の顔が見られない。
それどころか、近づくだけでドクドクと心臓が激しく打つし、話しかけられて言葉を返そうにもしどろもどろという有様だ。
今のところチームの他のメンバーにはバレていないようだが、この調子ではそれも時間の問題と言える。
当のジョルノはというと至って普段通りで、にこにこと爽やかな笑みを浮かべて話しかけてくるものだからまた困る。
ついこの間まで彼の教育係も兼ねていたチヒロであるから、突然会話をしなくなるというのも不自然だ。
そう頭で理解してはいるのだが、どうしても気恥ずかしくて避けてしまう。
年下なのに。後輩なのに。
ナランチャよりもまだ年が下なのよ、彼は。
ぐるぐると思考が巡っては、溜め息になって喉から流れ出る。彼女にとってこんな事は初めてで、どうすればいいやら自分でも分からなかった。