第4章 グラタン
「あ、グラタン?」
「あぁ。好きだろ?」
「うん…好き…」
――― あやー、今日はグラタンだよー ―――
――― よし、あやもでかくなったし秘伝のレシピを伝授しよう ―――
お母さんの得意料理で、それをアレンジして小学生の私でも作りやすいように教えてくれたお父さんの料理、それがグラタンだった。
「いただきます」
「おう」
鬼龍くんが作ってくれたグラタンは美味しくて、なんでか両親のことを思い出して涙がこぼれそうになった。だからいつものペースよりゆっくり食べていた。
「どうした? 美味くなかったか?」
「ううん、美味しいよ」
不安そうな表情で聞いてくる鬼龍くんに申し訳なくて、頑張ってペースを上げて食べた。
「ごちそうさまでした」
「おう。あとこれいつも頑張ってるからデザートな」
「え?」
鬼龍くんが出したのは、スーパーで売られている美味しい焼きプリンだった。大きいカップということもあってお値段もそれなりにするから滅多に買わないのに、どうしたんだろ?
「なんで?」
「なんでって…水瀬にはいつも世話になってるし、迷惑もかけてるし、たまにはな」
「……そんなことないのに」
私の方がいつも助けられてるのに…それに感謝されるようなことなんて私そんなに出来てないのに。
「どうした?」
「いつも感謝してるのは私も一緒だよ。いつもありがとう」
「…っ」
「それじゃあ、片づけてくるね」
私は食器をまとめてシンクに持って行って洗った。
「心臓がもたねぇ…」