第9章 ~明智光秀~ end.
戦国時代の朝は早い。
まだ陽が昇らないうちから、朝餉の支度を始める。
まぁ……私は寝てるんだけど……
そして明るくなる頃には、身支度を整えて朝餉を食べる。
武将達は皆、広間で朝餉を食べるから、私も一緒に食べるんだけど……
そっと襖を開ける。そしていつも確かめる。
あ、いた!
「早く入ってよ」
「わっ!ご、ごめん!家康っ」
襖の前で立ち止まっていた私に声がかかった。
素早く私がいつもの席に着くと
「なんだ、珍しい物でもいたか?」
意地悪な微笑みがこちらを向く。
「珍しい物?そんなの光秀さんに決まってるでしょう?」
家康が素っ気なく答える。
「そうか」
ニヤリと笑う光秀さんが、こちらを見た。
「朝の挨拶がまだだな、きょうこ」
二人のやり取りを見ていた私に声がかかる。
「あ、おはようございます。光秀さん」
「あぁ」
って、人に挨拶とか言っといて、あんたの返事はそれかーーーいっ!!!
と、思うけど、突っ込まない。
いいの。その意地悪な微笑みが見れただけで。
次々と皆が集まって、最後に信長様が入ってくると朝餉が始まる。
和気藹々と食べる時もあれば……
まぁ、私が聞いても大した問題じゃないんだろう。
軽い報告なんかを光秀さんが、信長様や皆に聞かせるように話している時もある。
正直、難しい話はわかんない。
言葉がね……難しいのよ。
そんな私に三成くんがそっと耳打ちしてくれて、分かりやすく簡単に解説してくれたりするんだけど……
今日は
「そうか、光秀、今宵は宴だな」
信長様のその声に、皆がわっと湧く。
今の意味は解るよ、と、にっこりと三成くんに微笑みかけた。
三成くんも嬉しそうに、微笑んでくれる。
なんか良いことあったみたいだな、そうかー今夜は宴かー
また、一晩中騒いでるんだろうなー
そんな事を考えながら、朝餉を食べた。