第1章 プロローグ~共通ルート~
「きょうこ様……きょうこ様……」
「あ、はいっ!!!」
「皆様、広間でお待ちですよ」
自室の襖を開けると、三成君がニッコリ笑って立っている。
「参りましょう」
「はい」
私は三成君の後ろを、大人しく着いて歩く。
このフェロモン過多の薄紫君は、どうやら自分の色気に全く気付いていない。
こんなに撒き散らしているのになぁ~……
後ろを歩いているだけなのに、女中さん達の視線が痛い。
大丈夫、私は“若いのに色気ムンムン”君には興味ないから。
ま、いちいち言わないけどね。
どんな時代でも、女は怖い。
だから彼女達の視線には気付いていない事にする。
あと三成君のフェロモンにもね。
だけど、ほんっと……無自覚って怖い。
こんなに皆をメロメロにして、知らん顔って凄いよね……
勉強になるわぁ~……
演技力の。
そう。私の泡姫No.1時代が続いたのは、この演技力のおかげだと言っても、過言ではない。
タイムスリップして来たこの時代。
日本史なんて殆ど知らない私でも、名前を知っているような武将達に気に入られている。
毒にも薬にもならない、遥か未来から来たヘンテコな女。
それが私。
身体を張らなくても、ニコニコと愛想良く笑い、時々、信長様には未来の話をしたりするだけで
衣食住が約束されているなんて……
有りがたい話だ。
だけど……
まぁ……どうせなら、借金背負った時点で、飛ばされたら良かったのになぁ~
そしたら、泡姫なんてしなくて済んだのに……