蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉(気象系.信号トリオ.BL )
第263章 追憶のキミ 26
-西の対の屋- に近い *西櫓(ヤグラ)
(な、何だ?人の泣き声みたいな… 誰だ?そこにいるのは?潤か?)
ガラっ
潤「雅紀様ぁ」
雅紀「当たりだ… 何を泣いているのだ?何があった?」
(そうだ …私を支えてくれる十六のお小性の潤。潤の父親に話があると呼ばれて行ったんだった…)
櫓の中隅に座り膝を抱え顔を埋めて泣いていた……一つ年下十六の潤。私を支えてくれる。大切な潤
雅紀「潤?大丈夫か?私付きの伯父上の妄執にそなたの父は… 伯父上の家臣とはいえ… 意にそぐわない命に従わねばならず、苦しんでいるのだな。本当にすまない…」
潤「家臣の勤めですから…」
雅紀「…本当に何があった?正直に答えなさい?お前が泣いているという事は… まさか… 伯父上の妄執に同意しているのは数人と聞いている。その数人が、翔の若君を… そんな… そのような事を 本当にしようとしているのか?!」
(いつも穏やかな雅紀様が、顔色を変えて怒りに震えていらっしゃる。一つ上十七の雅紀様は、お優しくて。小姓である私や全ての、下々の家臣にまでお優しい方で…)
潤「雅紀様が、翔若様を立て。翔若様も、雅紀様を… お二方が文通にて繋がっている事。そして翔若様の小姓の、和也殿も私と同じ… 殆どの、それぞれの家臣は… 翔若様をお守りしたいと考えているのです。しかし…」
雅紀「私の母上、蘭の方の兄と、翔の若君のお母上の櫻の方様の、二人兄の権力争い… 姉妹である、櫻の方と、蘭の方は互いに相手を思いやっているというのに… 母上は泣いておられたのだ。櫻の方様が『翔は、少しばかり体が弱いから、雅紀様… 私に跡目を継がせる事も厭わない」』と仰られたと…」
潤「私の父と、そして和也殿の父上も… 本音はどうあれ、計画に加担している事は間違い無いのです。先程まで雅紀様付きの伯父の日向の守(ヒュウガノカミ)と、私の父が翔若様を… と。話し合っていたのと同じ様に。翔若様付きの伯父の内大臣(ナイダイジン)と、和也殿の父上は雅紀様を… と。話合っていたと和也殿が…」
(出来ればそのような事はしたくないと… 私も、和也殿も思っていて… 雅紀様と翔若様が文通にて心を通わせている様に。和也殿と私も秘密裏に繋がっていて、情報をやり取りしていた)