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鏡面【ONE PIECE】

第1章 見習いトリオ


 自然と意識が浮上していくのに任せて目をゆっくりと開く。窓から射し込む光にすぐ目を細めながらも、今日が良い天気になったことにフレイアは頰を緩めた。元々の数が少ない女性クルーが共同で使う部屋では、未だ大半が夢の中だ。音を立てないように注意を払いながら身支度を整えると、厨房へ向かって足を進めた。

「ミーさん、おはよう」
「フレイア! いつも通りの時間だね。おはよう」
「体内時計は正確だからね!」
  厨房を取り仕切るミランダは朝食を作る腕を休めることなくフレイアに笑いかけた。それに笑顔を返すとフレイアも袖口をまとめて隣に立つ。
 よく食べる海の男達の食欲を満たすのは容易ではない。しかしミランダは不慣れな人間が大勢いても邪魔だとして、厨房へ立つことを許しているクルーは少ない。宴の次の日などは大人達は大体起きてこないため、結果的に10歳のフレイアが当番でなくても朝起きてくることは暗黙の了解だった。
「ミーさんは二日酔いとかしないよね」
 もうすぐ起きてくるであろう副船長のレイリーが注文してくるコーヒーを淹れながらフレイアが呟く。一人一人、二日酔いに効くからと要求してくるものはマチマチだ。厨房からすると忙しい朝に迷惑この上ないが、二日酔いで船が回らないなんて笑い話にしかならない。要求は大人しく聞いてやるのが大人の対応だとミランダは厨房に立った初日にフレイアに教えた。
「私が倒れたら誰があのバカ達の胃袋の世話するのさ。クロッカスの特製ジュース飲めば一発よ」
「じゃあ全員に飲ませればいいんじゃない?」
「ははは、この船の半数は戦闘不能になるね」
 あれは劇薬だからねェと豪快に笑うミランダを見ながら、劇薬を飲んで平気で働く目の前の女性に逆らってはいけないと再認識するフレイアだった。
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