第18章 覚悟
ふと目が醒めた。まだ辺りは暗い丑三つ時。
半身を起こす。なんだか目が冴えてしまった。
横を見ると隣で光秀が眠る。しっかりと手を繋いだまま。
普段は意地悪に飄々と仕事をこなす、いつもの光秀に戻っていたが、目醒めたあの日以来、夜はこうして必ず手を繋いで眠る。
繋いでいない方の手を伸ばして髪をなでる。柔らかい髪がサラサラと指の間を通っていく。
光秀を起こさないように、そっと繋いだ手を外して立ち上がり、静かに縁側へ出た。
夜空に浮かぶ月を見上げて小さく呟く。
「あの時、命を絶つなんて言って、ごめんなさい」
戦火に巻き込まれたあの日、貴方が死んだら私も命を絶つと光秀に向かって叫んだ。あの時の貴方の表情はきっと一生忘れない。
叫んだ言葉に嘘偽りは無いけれど。
あんな風に言えば、貴方が生きる選択をするだろう事は容易に想像できた。あの、非常時でさえ。
分かっていて、私は卑怯な手を使いました。貴方に生きて欲しくて。この乱世で、一緒に生きたくて。
なかなか目醒めなかったようで、心配をかけてしまったけれど……
さっきまで繋いでいた光秀の温もりが残る手を胸の前で抱きしめる。
少し光秀さんがうつったかな? と思う。
どんな手を使ってでも貴方に生きて貰うための存在になる。
それが、私の、本当の覚悟。