• テキストサイズ

きつねづき ~番外編~

第4章 賄賂


「あっ信長様、お疲れ様です」

さえりは廊下の先を行く信長に声をかけた。

「さえりか。今帰りか?」

折り畳まれた風呂敷しか持っていないさえりを見て信長は言った。

「はい。先程、着物を届けて来ました」

針子の腕を見込まれて注文が多く入るため、ここのところさえりは忙しくしている。公私ともに充実しているようだ。

「ところで」

信長は持っていた扇子でさえりの顎を掬い、上を向かせる。

「最近色っぽくなったようだが。よっぽど光秀に可愛がられているとみえる」

信長はニヤリと笑う。

「どうだ、今宵は夜伽でもしてみないか?」

「なっ……! 何を」

何を言っているんですか、と言いかけたその時、グイと肩を後ろに引っ張られる。

「丁重にお断り致します」

「光秀には聞いとらん」

信長は面白く無さそうにさえりの後ろに立つ光秀を見た。

光秀はニヤリと笑いながら懐から小袋を出す。

「信長様、今宵はこれでご容赦願います」

信長はその小袋を受け取る。

「ふん、今日の所はこれで勘弁してやる」

笑みを浮かべながら信長は去っていった。

「光秀さん、今のって……?」

「賄賂だ」

事も無げに光秀が答える。

「……」

さえりはため息をついた。なんだか、最近ちょこちょこ同じような光景に出くわしていた。

信長がさえりにちょっかいを出し、光秀が賄賂と称して小袋を渡す。お馴染みの光景だ。

さえりはもう一度、ため息をついた。

/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp