第18章 覚悟
パチパチと木が燃える音がする。火の粉が舞う。柱が音を立てて崩れ、黒い煙が迫ってくる。
ある支城の上位階で、光秀とさえりは戦火に巻き込まれていた。
「さえり! こっちだ!」
光秀はさえりの手を引き走る。袖で口を押さえ、煙を吸わないようにする。
ここにも火の手が……
光秀は唇を噛む。
さえりだけでも、助かる道はないかと視線を巡らす。
「安心しろ、お前は必ず助ける」
「光秀さん!」
さえりが叫ぶ。
「私だけ助かるなんて嫌です! 貴方が居ないなら、生きる意味がない」
「馬鹿な事を言うな!」
光秀は声を荒げた。さえりはその声にビクッとしたものの、負けじと声を荒げる。
「貴方に覚悟が在るように、私にもあります! 貴方が死んだら私は命を絶ちます! ……だから、貴方も生きて」
僅かな時間、視線が交わる。
お前を守るには、俺も生きるしかないのだな
一瞬で理解する。
「……わかった」
巡らせた視線の先に、井戸が見えた。
側に落ちていた器を井戸へと投げる。カランという渇いた音は聞こえない。
枯れ井戸なら二人とも助からないが、水は有りそうだ。だが水位は……
迷っている暇はなかった。
賭け、だった。
しかし。
「共に、生きるぞ」
「はい!」
光秀はさえりを抱きしめ、瓦を蹴って、井戸をめがけて跳んだ――