第17章 悪戯
後日、安土城の廊下で光秀と政宗は鉢合わせた。
「光秀ぇー」
政宗がづかづかと歩み寄る。
「いい加減、酒と水をすり替えるのを止めろ」
「ああ、悪かったな」
全く悪びれた様子のない光秀に、政宗はため息をつく。まあ、わかっていた事だが。
「どうも無かったか?」
光秀はさりげなく探りを入れた。
「は?」
「いや、風邪でも引かれたら困ると思ってな」
嘘くさいやり取りに政宗は顔をしかめる。
「そうさえりが心配していた」
光秀はもっともらしい事を言う。政宗はああ、と納得したようだった。
「そんなに柔じゃねぇよ」
「そうだな」
光秀は少しほっとしていた。悪戯し過ぎたから気になっていたのだ。
「ではな」
そう言って光秀は去って行った。
光秀と別れた政宗は少し不思議に思っていた。
体調はどうも無い。
少し、イヤラシイ夢を見た様な気がするだけで。
そこでハッと思い当たる。光秀がいつもと違う事を聞いてきた理由。
「まさか、な……」
しかしそれを想像するのはあまりにも卑猥すぎた。
さえりに探りを入れれば直ぐにわかる気もするが、それこそ野暮というものだ。
「うーん!」
政宗は思いっきり伸びをした。
「天気も良いし、見張りについてる奴らを労いに行くか!」
お弁当を持ってな、と思いながら政宗は台所へと消えて行った。