• テキストサイズ

きつねづき ~番外編~

第16章 密会


あ、まただ……

安土城のある小部屋から出ようとして、さえりは外から聞こえてきた会話に足を止めた。

「明智殿がまた城下で怪しい人物と会っていたらしい」

「俺も聞いた。金銭授受もあったとか」

「さえり姫様と懇意にしていたから、大人しくなるのかと思えば」

「姫様をも利用しているんじゃないのか」

「あり得るな。だが最近は姫様も愛想を尽かしているらしいぞ」

好き勝手な噂話をしながら、声は遠ざかっていった。

「違うのに……」

さえりは俯いて唇を噛んだ。

自分の胸元に手を当てる。

光秀に沢山付けられたはずの紅い花びらは、薄くなり消えかけていた。

ずっと消えなければいいのに、と思う。

さえりは暫くその場を動けずにいた。


/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp