第10章 仲直りの方法
翌日。
光秀とさえりが一緒に御殿を訪れたことに家康は驚いた。
定期的に怪我の具合を診ていたから光秀が来るのはわかっていたけれど、確か怪我の事はさえりには言うなと光秀に口止めされていたはずだ。
家康は眉をひそめながら光秀を見た。
「家康!」
さえりが詰め寄る。顔が近くて、ドキッとする。
「私に怪我の手当ての仕方を教えて欲しいの」
「だそうだ。頼む」
「……わかりましたよ」
同時に二人に頼まれたら断れない。
「こうやって軟膏を塗って……」
「包帯の巻き方は……」
光秀の怪我を診ながら、家康は丁寧に手当ての方法をさえりに教えていく。さえりが包帯と格闘する様を光秀は黙って見ていた。
「以上、おわり」
光秀の傷は良くなっているとはいえ、まだ治ったとは言えないものだった。
「軟膏と包帯を渡しておくから。1日1回は替えて。無くなったら取りに来て。その時に怪我の具合も診るから」
「ありがとう。家康」
「別に、大したことじゃない」
さえりの笑顔が眩しくて目を逸らす。
「あっ、私、お礼にお茶入れてくるね!お茶菓子も持ってきたの。台所借りるねー」
パタパタとさえりが部屋から出て行った。騒々しい。少しは落ち着けばいいのに、と家康は思う。
光秀と二人、部屋に残される。
「光秀さんも形無しですね」
「……そうかもな」
嫌味、のつもりだったのに。惚気で返された気がする。
何があったのか知らないけど、何にしても俺を巻き込まないで欲しい。
家康は壮大にため息をついた。