第10章 仲直りの方法
信長に呼び出された光秀は天主を訪れていた。
「信長様、どのようなご用件でしょう」
信長の前に座り頭を下げる。珍しく呼び出される心当たりがなかった。いつもなら大体見当はつくのだが。
「さえりと喧嘩でもしているのか」
「……は?」
思わぬ質問に思わず信長を仰ぎ見る。
「さえりがショボくれたまま廊下を歩いていた。辛気くさくてかなわん」
「あやつが笑わねば皆の士気が下がる。早々に解決せよ」
「御意」
そう答えると、光秀は天主を後にした。
参ったな、と光秀は思う。
まさかさえりとの事で天主に呼び出されるとは。信長様はかなりさえりを気に入っているのだと改めて感じる。
さて、どうしたものか……
光秀は思案する。
ここ数日、さえりは口を閉ざしていた。必要最低限の事しか言わず、顔もまともに見ない。かなり怒っているようだった。
心当たりがありすぎて……
いや、本当はわかっていた。
先日の戦で怪我を負った。安土に帰るまでに傷は治りかけていたから、心配させる事もないと、さえりには黙っていたのだが、それが逆効果だったようだ。
怪我の噂を漏れ聞いたさえりは石のように黙ってしまった。
どうしろというのか
光秀は珍しく少し苛つきながら、天主からの長い廊下を素早く歩き去った。