• テキストサイズ

きつねづき ~番外編~

第29章 約束


さえりが安土にやって来て数日が過ぎ、光秀との奇妙な関係が始まっていた、ある日の事。

政宗はさえりの雰囲気が以前と少し違う事を感じ取っていた。

「なぁ秀吉。最近、さえりが少し色っぽくなってきてねぇか?」

安土に来た頃には無かったはずの色香を纏い、時々憂い顔をする。

「そうか?」

軍議が終わり、解散になった広間で、帰ろうと立ち上がりかけた秀吉に話しかける。秀吉は先程まで同席していたさえりを思い浮かべたようで、考える仕草を見せた後、わからないというように首を傾げた。

「誰か好きな奴でも出来たのかもな」

政宗がニヤリと笑うと、秀吉は眉を寄せた。

「なんだと? それは何処のどいつだ!」

「知らねぇよ。そう熱くなるな。可能性の話だ」

世話好きの秀吉らしい反応に苦笑する。おおかた兄貴分にでもなったつもりでいるのだろう。

「……そうだな。さえりも大人の女性だ。好きな奴が出来ても不思議じゃないよな」

そうだなと言いながら、秀吉は納得していない表情をしていた。

「もしそれが俺ならすぐにでも応えてやるんだけどな」

さえりは周りにはいない女で、なかなか面白い。政宗は割と気に入っていた。

「お前な! 遊びでさえりを傷つけるような事はするなよ」

政宗だけではない。さえりを気に入っている男は多いようで、秀吉も例外ではなさそうだ。

「しねぇよ。俺はいつでも本気だ」

ギラリ、と獲物を狙うような目をした政宗に、秀吉が呆れながらため息をつく。

「わかってないだろ……」

その後、政宗と秀吉は立ち上がり、広間を後にした。

「一応、あいつにも釘を刺しておくか」

秀吉がぼそりと呟いていた。


/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp