第26章 雷
チチチ、チュンチュン
明るい光と小鳥のさえずりで目が覚めた。ゆっくりと瞼を開けると、襖を開けて外に出ようとする光秀が見えた。
「ん……おはようございます。光秀さん」
「さえり、おはよう。起こしてしまったか」
光秀越しに見える空は、昨夜の雷雨が嘘のように晴れ渡っていた。庭には雨の名残が朝露として残っており、太陽の光を反射して美しく虹色に輝いている。それを背にする光秀までも輝いて見えた。
なんて美しく
なんと愛おしい光景なのだろう
昨夜の不安を吹き飛ばしてくれた、愛しい人の姿はとても眩しくて。
「光秀さんっ……!」
近づいてきた光秀に、さえりはたまらず抱きついた。
「おやおや、朝から大胆な誘いだな」
抱きしめ返されたと思ったら、光秀の指が何も纏っていないさえりの背中をツーっと滑り降りた。
「あ……っ」
忘れていた。昨日愛しあってそのまま眠りについたから、今素っ裸だ。急に恥ずかしくなってきて素肌を隠したくなったが、抱きしめられていて身動きがとれない。
「隠さなくていい、よく見せろ」
光秀が全てを見透かすような笑みを浮かべた後、顎を掴まれ口づけられた。徐々に深くなっていき、朝から蕩けそうになる。
「ん……っ」
「昨夜は暗くて、あまり口づけ出来なかったからな」
その言葉通り、昨夜の続きををするかのように、光秀とさえりは何度も口づけを楽しむ。その口づけは、さえりに昨夜の事を思い起こさせるのだった。
もう、怖くない
不安は愛しい記憶に塗り替えられて
きっと今日から、雷だって好きになれる
貴方が、傍に居てくれる限り――