第24章 誘惑
熱い情事が終わった後の、甘い甘い余韻の時間。
褥に横たわり、まだ時々ビクンと身体を震わせるさえりを、頬杖をついて隣に並ぶ光秀が満足そうに見つめる。
光秀はさえりの手を取り指を絡めて、手の甲に口づけた。
「ん……」
さえりがはにかむ。その後、光秀をじっと見つめた。
「どうした?」
熱い視線に気づいた光秀は、さえりの指を弄びながら優しく尋ねた。
「好きだなぁって。あと、やっぱりいつも翻弄されてばかりだなぁって思って……」
素直に答えるさえりに光秀は苦笑を漏らす。
「俺も好きだぞ」
もう一度手の甲に口づける。翻弄については、そうでも無いがな、と思いながら。
嬉しそうに微笑むさえりを見ていた光秀はふと妙案を思い付いた。
「翻弄されてばかりで悔しい、と言うのであれば……」
光秀はわざとらしく考える素振りを見せる。急にさえりが不安そうな表情を浮かべた。コロコロ変わるさえりの表情を見るのは愉しい。
「俺を、誘惑してみろ」
「ええっ!?」
心底驚いた表情を見せるさえりを満足そうに見つめる。
「期間は明日から3日間。俺が誘惑されてお前を抱いたら成功。方法は問わない。出来なければお仕置きだ。なに、それほど難しい事ではないだろう?」
「そ、そんな……」
「仕置きの方を希望するのであれば何もしない、という選択肢もあるぞ」
「そんな事……」
「たまにはこういう志向も面白いな」
光秀は一気に畳み掛ける。
「面白くないです! 悔しいなんて一言も言ってないのに……!」
「では全く悔しくないとでも?」
「そ、それは……」
さえりは素直だ。だが今はそれが仇となる。
「決まりだな。健闘を祈る」
「もう、わかりましたよ……!」
観念したさえりは半泣きで渋々了承する。いや、させられる。
この時点で既に翻弄されている気がするんですけど……!
さえりはそう思いながらも、更にヤブヘビにならないようにと、余計な事は言わないように言葉を飲み込む。
褥の中で明日からの誘惑をどうしようと悩むさえりだった。