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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第7章 信頼



*クラウスside*


ギルベルトの待つ駐車場まで、ミス・アメリアと共に向かう。

彼女は終始俯いたままで、彼女の様子をうかがっていた私と時折目が合っても、すぐに顔を伏せてしまう。

目を合わすのが怖いようだ。

顔が怖い、とスティーブンにもよく言われるものだが、私の顔が彼女を怯えさせてしまっているのだろうか。

だとしたら大変申し訳ない。

しかし、ミス・アメリアには気がかりな点がいくつかある。

その気がかりが私の勘違いであってほしいと願いながら、私は彼女の様子を横目で見ずにはいられなかった。



「アメリア様、どうぞ」

「ありがとうございます」

ギルベルトに頭を下げて、ミス・アメリアは車に乗り込んだ。
その後に続いて、私も彼女の隣に乗り込む。

「さて、ミス・アメリア。ご自宅の場所をうかがってもよろしいかね」

扉を閉めて、彼女に声をかける。
すると瞬間、ミス・アメリアの顔がこわばった。

唇を噛み締め、俯いていた顔がさらに沈みゆく。

何が彼女の気に障ったのだろうか。
数度会っただけの私に自宅の所在地を聞かれたのが嫌だったのだろうか。


「……あ、あの。私、引っ越したばかりで。住所がまだよく分からなくて」

「そうでしたか。でしたら、何かお近くに目印になるような建物はございますか?」

ギルベルトが穏やかに尋ねると、ミス・アメリアはホッとしたような顔になった。

「……あの、初めてミスタ・クラウスとお会いした場所までお願いします」


初めて彼女と会った場所。

発狂状態の異界人が暴れていた、あの場所の事か。


「ギルベルト、32番街まで頼む」

「かしこまりました」


車はゆっくりと32番街を目指して走り始めた。

32番街まで、ざっと20分ほどかかるだろうか。


それまでに、彼女にはいくつか尋ねておかねばならない事がある。

チラと横目で伺えば、またしても目が合った瞬間、彼女は勢いよく目をそらす。

やはり何か怯えているように見える。

そして、何かを隠したいようにも。


「ミス・アメリア」

「っ、はい」

私の呼びかけにひどく驚いた様子で、彼女はこちらに顔を向けた。

目がゆらゆらと泳いでいる。

私と目を合わすのがよほど嫌なようだ。


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