第26章 Cinderella Dream
曲が鳴り終わると何かが破裂するような音がして、歓声が上がった。
ハッピーバースデー!の声がいくつも聞こえる。
どうやら先ほどのケーキは誰かの誕生日を祝うものだったらしい。聞こえてきた拍手に思わず私も拍手をしてしまった。
そんな私を見てクラウスさんは微笑んだ。
「クラウスさんのお誕生日っていつですか?」
「12月31日だ」
「1年の最後の日かぁ……それは忘れようのない誕生日ですね」
「そうだな。アメリア、君の誕生日は?」
「私、誕生日知らないんです。今までお祝いなんてする事なかったですし」
瞬間、クラウスさんの顔が曇る。
特段気にしていないのに、彼にそんな顔をさせてしまったのが申し訳なかった。
「すまない、アメリア」
「いえ大丈夫です。気にしていないので…それより、クラウスさんのお誕生日もうすぐですね」
12月も半ばだった。もうあと半月で1年が終わろうとしている。
今年いっぱいはまだ、クラウスさんのそばにいられるだろうか。
「ああ……。そうだ、アメリア。君の誕生日も私と一緒に祝うというのはどうだろうか」
「クラウスさんと一緒に、ですか」
「12月31日を君の誕生日としよう。君の言うように、きっと忘れられない誕生日になる」
たとえすべてが終わって、クラウスさんと離れることになっても。
12月31日。その日だけは、お互いの事を思い出すだろうか。
そうだったらどんなにいいか。クラウスさんの中で、少しでも私という存在が残り続けてくれたら。
「素敵なご提案ありがとうございます。お言葉に甘えて、クラウスさんと同じ誕生日だって思う事にします」
「今年は盛大に祝う事にしよう。楽しみにしていたまえ」
クラウスさんは嬉しそうに牙を見せて笑った。