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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第24章 “Long time no see.”



今日はなんとなく、気まずい朝食だった。
昨日お金の事でクラウスさんとは少しギクシャクしてしまっていたから、食事中もあまり会話が弾まなかった。
体調が悪いのかと心配してくれたところをみると、クラウスさんは昨日の事気にしていないみたい。
彼にとっては翌日には忘れてしまうような些細な事だったんだろう。

だけど私の中ではまだモヤモヤしたものが残っている。
ツェッドさんと一緒にパフォーマンスするという案は却下され、結局私にかかる費用についてはうやむやのままだ。

「おっはよー、アメリアっち! お邪魔するわよ~」

部屋に明るい声が響く。
ドアへ目をやるとK・Kさんが満面の笑みで顔をのぞかせていた。
彼女は大きな紙袋を抱えていて、中からはマニキュアをはじめたくさんの化粧品やメイク道具が出てきた。

「ずっと部屋にこもりっぱなしだと気分ふさいじゃうでしょ? 今日は私とオシャレして遊びましょ」

座って座って、と背中を押され椅子に腰を下ろすと向かいの席に座ったK・Kさんがテーブルの上にズラリと色とりどりの小瓶を並べ始めた。

「迷うわね~! 薄いピンクも可愛らしくていいし、とびっきり真っ赤なのも大人っぽくていいわぁ~。ブルーのラメ入りもいいのよねぇ」
「これ、なんですか?」
「マニキュアよ。爪に塗ってオシャレを楽しむの」

小さなガラス瓶の中には赤やピンク、明るい緑、キラキラと輝く粒の入ったもの…様々な種類のものがあった。
色とりどりのそれを眺めているだけでも楽しい気分になる。

「どうする? アメリアっちは何色が好き?どの色を塗ってみたい?」
「私、ですか…?」
「色を選んでくれたら塗ってあげるから」

ふんわりとした優しいピンク。元気な感じのオレンジ色。落ち着いたベージュ。それに、深紅のバラを思わす深いレッド。
最後に手に取った深紅のマニキュアを目にした時、これだ、と思った。

「あら意外。もっと明るい色を選ぶかと思ってたわ」
「似合わないでしょうか……」
「そんな事ないわよ。手を出して」

K・Kさんに言われるがまま、手を差し出す。
そのままマニキュアを塗るのかと思っていたら、彼女は何か道具を取り出して、爪の手入れを始めた。
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