第23章 You raise me up.
「いいじゃないか、公園でのパフォーマンス。このクオリティなら大勢見物にやってくるだろう」
「それは同意するが、アメリアを危険に晒すことになる。断じて許可できない」
「逆だよクラウス」
「逆、とは」
スティーブンの意図をはかりかね、クラウスの眉間の皺は深くなる。
「大勢に注目されればされるほど、黒幕が近づいて来る可能性も上がるだろ? 向こうの尻尾をつかむにはいいチャンスじゃないか。たまにはこちらから仕掛けることも必要だろう?」
「スティーブン、君は…アメリアを囮にするつもりかね」
信じられないといった口調で詰め寄るクラウスに、まぁまぁとスティーブンは宥めるような仕草をしてみせた。
「囮というと感じが悪くないかい?クラウス。少なくとも彼女のお兄さんの方は接触を計ってくると思うけどね」
「アメリアの身に危険が及ぶことは許可できない。…この話は終わりだ」
「……そう。分かったよ」
残念そうに肩をすくめながらスティーブンは諦めの姿勢を見せた。
そのやり取りを見ていたアメリアもまた黙って諦めるしかなかった。