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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第18章 ライブラへようこそ




『そりゃあ、体内に“何か”あるな』

電話越しのシンデルマイサーの言葉に、クラウスは“何か”の正体について思考を巡らせていた。


慌ただしくブラッドベリ中央病院を離れ、ライブラ事務所へとやって来たクラウス達であったが、いつものように事務所に繋がる扉に足を踏み入れた瞬間、目に見えない何かに弾かれて扉の外へ追い出されてしまった。

正確に言うと、追い出されたのは目隠しされたアメリアと、彼女を抱きかかえていたクラウスだけだった。

クラウス一人通るのなら問題はなかった。
しかしアメリアを連れていると、どうやっても弾かれてしまう。

明らかにアメリアが事務所に入るのを警備システムが拒否している。


「何を隠しているのかな、君は」

そう言って幾分冷ややかな目でスティーブンがアメリアを見つめると、アメリアは困惑した顔で縮こまってしまった。

隠している、と言われても何も身に覚えがないのだ。


対応を考えるため場を移した一同は、今はダイアンズダイナーのボックス席に収まっている。

スティーブンの責めるような目から逃れようと、アメリアは隣に座るクラウスに助けを求めるような視線を送った。

スマホを耳にあてたまま、クラウスは彼女の視線を受け止め、ただ頷く。


「──つまり、GPSのようなものが彼女の中にあると」

『おそらくな。病院でそのあたり検査しなかったのか』

「体内に何か埋め込まれている形跡は無かった」

『となると見えないヤツって事だな』

「術式か……」

『だろうな。そういうのはソッチの専門だろう。システムの方をいじる前にそのお嬢ちゃんの方をなんとかしてみるこったな』


不安そうに自分を見上げるアメリアの肩に優しく触れ、クラウスは再びスマホでどこかに連絡を取り始めた。


「LHOS(レオス)に協力を仰ぐ」


それだけスティーブンに言うと、クラウスは電話の相手と何やら話し込み始めた。

その間、スティーブンは変わらず少し険しい顔をアメリアに向けたままだった。

その視線を受けて、アメリアは居たたまれなさに下を向くしかなかった。


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