第17章 転換
ザップは鋭い視線をリアに向けたまま、クラウスと話をしている。
(いつの間に部屋に戻っていたの? 音も、気配すらしなかった)
リアの背中を冷たいものが伝う。
軟派でヤることしか考えてないような男だと思っていたのに。
「あー、了解。野暮用片したら行きますわ」
電話を終えて、ザップはしゃがみこんでリアの顔を覗き込んだ。
「っ、ごめんなさい、勝手に触って」
「なぁリアーナ。俺はお前の事すげぇ好きだけどよ。こういうのはちょっといただけねぇな」
プラプラとスマホをかざすザップに、リアはうなだれた。
そしてそのまま顔を手で覆い、スンスンとすすり泣きを始める。
「ごめんなさい、ザップ。……女の人からの電話だと思って、つい気になって……」
「! あー……いや、すまねぇ。さっきのトレイシーってのは腐れ縁的なヤツでな、俺はリアーナ一筋だぜ?!」
「……ホント?」
少しだけ手から顔を出して、ザップを上目遣いで見つめる。
「本当だって!」
目があったザップは弁解しようと必死だった。
「でも、さっきはトレイシーと食事に出かけたじゃない?」
「食事だけだ! その証拠にすぐ帰って来たろ?!」
「……それも、そうね」
「信じてくれるか?」
「今回は、ね」
「リアーナぁぁぁ!!」
抱きついて頬ずりするザップにリアは喜ぶフリをする。
薄っぺらい愛の囁きが始まり、笑顔を貼り付けたままリアはしばらくその囁きを黙って聞いていた。