第16章 Virgin Mary of Hersalem's Lot
美しい賛美歌の旋律に負けない、ミス・アメリアの澄みきった透明感溢れる声に、知らず知らずのうちに私の頬を冷たいものが静かに伝っていった。
これまで、著名な歌手の歌唱で感動することはあっても、ここまで魂が打ち震えるような歌声を耳にしたのは初めてだった。
それは私が彼女に情を移していた事も関係していたかもしれない。
しかし、その事を差し引いても、彼女の歌声は素晴らしく、まさに神に捧げるにふさわしいものだった。
「……とても、綺麗な歌声ですね」
ツェッドも私と同じように、ミス・アメリアの歌声に聞き入っていたようだった。
「ああ……本当に……」
カーテン越しに見える、ミス・アメリアの影。
ミス・ハンナをその腕に抱く彼女のシルエットは、幼き子を胸に抱く聖母マリアのようにも見えた。