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【血界戦線】歌声は遠くに渡りけり

第15章 対価の代用



「……ミス、アメリア」


顔は向こうをむいたまま、ミスタ・クラウスは私にペットボトルを手渡してくださった。

そうだ。

これは治療の一環。

これでミスタ・クラウスから受け取ったこの水を口にすることが出来れば、治療は一歩前進したことになる。

ミスタ・クラウスのご厚意を無下にしたくはない。

けれど、そう簡単にうまくいくかどうか分からない。

私は受け取った水に、おそるおそる口をつけた。

ほんの少しだけ口に含み、飲み込む。


サンドイッチを口にした時のように、喉がくっと絞まるかと不安だったけれど、そんな様子はなかった。

口に入れた量が少なすぎて、飲み込めたのかどうかよく分からなかった。

もう一度、水を口に含む。
今度は先ほどよりも多めに。

ミスタ・クラウスとミス・エステヴェスが見守る中、水を飲み込んだ。

今度はゴクリと喉がなって、水が喉を通っていくのがよく分かった。


「……飲み、こめた……」


手元のペットボトルからミスタ・クラウス、ミス・エステヴェスの顔に視線を移す。

一瞬の間をおいてお二人ともが、わっと声を上げて喜んでくださった。

お二人の嬉しそうなお顔につられて私も笑顔になる。


「うまくいって良かったわね! 固形物もいけるか試さないといけないけれど、ひとまず飲み物はこれでクリアね。二人ともお疲れ様。いいキスっぷりだったわよ」

「……!」

「あら、そんなに照れなくてもいいじゃないミスタ・クラウス。徐々に気持ちが高まっていく感じが伝わってきて、見ている私までドキドキしちゃったわ。映画のワンシーンみたいで良かったわよ」


ミス・エステヴェスの論評に、私もミスタ・クラウスも恥ずかしさのあまり顔を上げることが出来なかった。






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