第13章 痕跡
「…確かに、もっと慎重に動くべきだったな。クラウスさえ押さえればなんとかなるかと踏んでいたが……アメリアの事もある、早いところ彼等の事を調べないと」
そう口にはしたものの、イアンに何か当てがあるわけではなかった。
幻術や、自分の人を操る力を使うにしても、使いどころを見極めなければ、ただ単にクラウス達にヒントを与えてしまうだけだ。
「イアン、私心当たりがあるの。クラウスに繋がってるかどうか、絶対的な確証はないけど、クラウスと同じように血を操る男を知ってるわ。その人、この間私をナンパしてきたの。こっちからモーションをかければ、関係を持つのは簡単だと思う」
「……他に当てもない。リア、そいつと接触してくれるか。空振りでもいい、何か少しでも情報が得られれば御の字だ」
「ええ、やってみる」
「ただ気を付けろよ。君もクラウス達に顔を見られている。もしその男とクラウスに繋がりがあるのなら、君の事が伝わってる可能性もある」
「そうね、分かったわ」
ヘルサレムズ・ロットの片隅でひっそりと、イアンとリアは決意を固くしたのだった。