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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第7章 ✼月見草✼



§ 結Side §


「結様、夕餉をお持ちしました」


「ありがとうございます」


謙信様の部屋とは離れた小さな部屋は、人気がなくとても静かだった。
謙信様に私のことを悟られてはいけない。
ただの針子が謙信様と共に刺されたなんておかしな話だ。
そこで私は信玄様にお願いして、小さな空き部屋を使わせてもらっていた。


「怪我の具合を見ても……?」


「はい……」


怪我をして一ヶ月……ようやく痛みも治まってきた傷は、恐らく跡が残ってしまうだろう。
傷跡に塗っている軟膏は、家康がわざわざ持ってきてくれたものだった。


「そろそろ歩いても大丈夫な頃だと思いますよ」


女中さんの安心した顔を見ると、私からも笑みがこぼれる。


「色々と迷惑をかけてしまってすみません……」


「とんでもない…!結様にはいつもお世話になっておりますのでこれくらいの事はさせてください」


お城の皆は、芝姫様が春日山城に来ている間は絶対私に会わせないようにしてくれている。

本人たちは隠しているつもりだろうけど、顔を見れば一目瞭然。芝姫様が来ているであろう間は不機嫌オーラが溢れまくっていた。


「謙信様もそろそろ普通に生活ができるくらいには回復されていると聞いています」


「そう……良かった」


私と恋仲になる前の謙信様の事だから、傷が治りきらないうちに戦に行くと言い出しそうだ。
それは、私が針子という立場になっても止めないといけない。


「結様、謙信様に会いたいと顔に書いてありますよ」


「……それは…」


「結様、今は針子なのでしょう?姫ではないのですから少しくらい弱音を吐いても許されるのでは?」


まるで子を見守る親のような女中さんの顔を見ていると、安心して弱音が零れてくる。


「少し……寂しいです」


「それを見せない結様は強いお方ですよ」


「いつも謙信様は頭を撫でてくれるんです」


ほんの少し前までの日常を懐かしんでいると、女中さんは私の頭に手を置いた。


「気休めにもなりませんけれど……あなたは十分頑張っています」


ずっと張り詰めていたものが溶けて、涙がこぼれそうになる。
女中さんは暫くの間優しく頭を撫で続けてくれた。

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