第6章 ✼弟切草✼
(他の男が結と仲睦まじげに話しているのは面白くないな)
景持が結に恋心を抱いても居なくても、それは変わらない。
「結」
名前を呼び、わざと腰を引き寄せる。
俺に気付いた景持は、顔を引き締めて姿勢を正した。
「話の途中だったか?」
「いっ、いえ!」
「そうか。では行くぞ、結」
「はい。景持さん、また」
「はい……!」
そのまま部屋に入ると、結が俺の顔を覗き込んでくる。
「あの……怒ってますか?」
「いいや。怒ってはいない。だがお前は直ぐに男を虜にしてしまうから気を付けろ」
俺としては大真面目に言ったつもりだったが、結は小さく笑った。
「流石に大袈裟ですよ。さっきだって私と秀吉さんが一緒に来たのを見て本当に織田家の姫なんですねって驚かれただけです」
「他には何か言われていないか?」
「私の事を疑ってるわけでもなさそうでしたし本当にそれだけですよ」
心配しすぎです、と言って肩を竦める結。
「認めぬと言うのなら、仕置きをしなければならないな」
「ん……っ?!んぅ……」
結を押し倒して深い口づけをすると、俺の頬に結の熱い息がかかる。
「そんな顔をして……男を誘っているようにしか見えないが?」
着物の隙間から手を差し込み、素肌に触れる。
結の体がビクッと震えたと同時に、縁側から騒々しい足音が聞こえてきた。
「失礼します、謙信様!」
急いでいるような口ぶりに、結から体を話して一つ口付けを落とす。
「続きはまた夜にしよう」