第5章 ✼風信子✼
「我慢するな。もっと聞かせろ……お前の声を」
声が漏れないように抑える手を頭の上で縛り付けると、謙信様は妖艶な笑みを浮かべる。
「お前のその涙も……口から出る声も全て俺のものだ。離れていくことなど許さない」
「……っ」
「愛している……お前がいなければ、息もできないほどに」
「けん…しん様……」
この言葉を聞いたのは二度目だ。
一度目は牢の中で気持ちを伝えあった時。
その時はどんな歪んだ愛でも受け止めると覚悟をしていたのに結局怖くなってしまった。
それから謙信様も変わって、その時よりもだいぶ普通の愛に近づいてきたと思う。
表面上は。
「謙信様。今だけは謙信様も何も我慢しないでください。思っている事全部……私に教えてください」
謙信様の愛はきっと今も歪んだままだ。
私を傷つける全ての物を排除したいと思っているだろうし、もしそうじゃないとしても私に向けてくれる愛の重さは変わらないのだろう。
「俺の気持ちをそのまま伝えれば、またお前を怖がらせてしまう」
「言葉で伝えるだけなら、他の誰も傷つきません。私は貴方の気持ちが知りたいです」
私は謙信様に抱きつき、逞しい肩に赤い痕を付けた。
「大好きです。謙信様」
「っ……お前という奴は本当に俺を煽るのが上手いな」
そう言って私の胸に顔を埋めると、胸元に私が付けたものと同じ赤い花が咲く。
「お前を他のものになど見せたくない。俺だけが見ていればいい」
「っぁ……!」
謙信様は左の胸を口に含むと、今まで私を想って隠していた本音を告げ始める。
「俺に感じているのか?結。もっと鳴け」
口に含んだものはそのままに、謙信様の手は足の付け根を撫で上げた。
「ああっ……!はぁんっ……」
「もう濡れているな。いやらしい子だ」
「言わないで下さ…っ……」