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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第4章 ✼勿忘草✼



「そう言えばここは伊勢姫の事を結に伝えた場所だったな」


小高い丘にある木の下で全てを話した懐かしい思い出。
感傷に浸っていると、だんだんと空が曇り始めた。
晴天だった空は雲に覆われて、灰が青を侵食する。


「……来たか」


すっかり黒く染まった空は俺に向かってこう言った。


「まだ運命に逆らうか」


運命…それは俺と結は一緒に生きられないという運命だろうか。
否、正しい運命など何処にも無いのだ。
その者が運命だと思えばそれは自分の中で運命となる。
俺はこの身が朽ちるまで結と共に居ると思っていた。
だがその運命を叶多は自分で捻じ曲げた。


(結に嫌われる覚悟をした心意気は誉めてやろう。だが…お前が運命を捻じ曲げたならば、俺はお前の運命とやらを捻じ曲げよう)


「お前の言う運命が何かは知らんが…俺と結は恋仲になる”運命”だった」


(結…そろそろ戻って来い。いつまで待たせる気だ。俺は気が長いほうでは無い)


刹那、目を開けていることすら出来ない閃光が辺りを包み込み




————ドカンッ!!!!!!!!!





と聞き覚えのある轟音が響き渡る。



目を開けるまでの一秒、俺は期待した。
目の前に結が居るのではないか、と。
どこまでも探しに行くとは言ったものの、結が自ら戻って来ていれば、それは願ったり叶ったりだ。


早く目を開けて結を探そう。そう思ったがその必要は無かった。





急に体が重くなり、その場に倒れこんでしまう。
柔らかな感触が手に、足に、身体に身体に伝わって来た。
それだけ時が経とうと忘れないこの感触…何度も俺を包み込んだ匂い。肌をくすぐる長い髪。

無意識に手に力を込めると、それはぴくっと震えた。



————愛する者をこの手で抱けるとは、こんなにも幸せなのか


広い世の中で出会えたこと自体が奇跡だと誰かは言った。
ならば、一度引き裂かれもう一度出会い、更に再会の瞬間にお互いの胸の中にいる……それは紛れもなく








奇跡が起こした運命だろう。


























「おかえり、結」





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