第4章 ✼勿忘草✼
§ 謙信Side §
「結……」
晴れ渡る空にのどかな空気。
今から嵐が来るなんて言われても信じない者もいるかもしれない。
結は俺の顔を見たらきっと泣いてしまう。だが周りに人がいれば泣かないように我慢をする。
それが分かっていたからここには俺一人で来た。
「ワームホールはほぼ確実に今日出現します。ですが当然結さんもワームホールに巻き込まれる場所に居ないといけない…必ず帰って来るとは言い切れません」
佐助は何度もそう言った。
だが結がそこに居なくとも、必ず俺が連れ戻そう。
お前が俺を探して彷徨っているのなら、俺が500年後の未来へ行きお前を見つけ出そう。
お前が記憶を無くしたというのなら、思い出すまで静かに隣にいてやろう。
他の男を好きになったというのなら、再び振り向いてもらうまで。
夜な夜な夢を見る。以前とは違う夢だ。
結がさようならと言いながら俺から離れていく夢。
夢の中ではその手を掴みたくても体が動かなかった。
きっとまだ俺は結にこのまま会えないのではないかと恐怖を抱いている。
だけれどここにワームホールが現れた時、そんな事はどうでも良くなる。
お前が教えたのだ。
俺はお前の事ならば何でも出来ると……。