第4章 ✼勿忘草✼
§ 謙信Side §
結が連れ去られた次の日、武田と上杉を加え安土城では武将たちの顔が勢ぞろいしていた。
「今、何と言った」
怒りか悲しみか何なのか分からない感情。
かつてどのような敵に対峙しても誰を殺そうとも芽生える事の無かった感情。
全てはこの男の発言のせいだ。
「伊達政宗…もう一度言ってみろ」
「あー…だからな、少し前までいた叶多って男は結の恋仲だった男だ」
「聞いてないぞそんな話」
「俺も聞いてません」
伊達政宗以外全員が驚きの表情をする中、ばつが悪そうに話し始める。
「少し前に叶多が夕餉の準備を手伝ってくれたことがあってな。あいつらがあまりに仲が良いからどういう関係か聞いたんだよ」
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「お前結と妙に仲が良いよな?」
「えっ、そうですか?」
「まあな。元いた所で何かあったのか?」
「うーん…実は俺、結と昔付き合ってたんですよね」
「つきあってた?」
「この時代で言うと…恋仲ですかね?」
「へぇ………は?!恋仲?!」
政宗はこの時瞬時に思った。
これがバレたら叶多は謙信に斬られる、と。
「おいそれ絶対誰にも言うなよ」
「はい?結の迷惑にもなるだろうし言いませんけど…」
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事のあらましを告げる伊達を、その場にいた全員が静かに見守る。
「恋仲だったのはだいぶ前の事だって言ってたけどな。別に喧嘩別れでもないから今も普通に話せるだけだって言ってたよ」
「俺は聞いていない」
「当たり前だろ。昔の男の話を好き好んでする女がいるかよ」
言われてみればそうだ。
特に結は俺の事を気にして絶対に言い出さないだろう。