第4章 ✼勿忘草✼
「結!聞いたよ?告白されたんでしょ?」
お昼休みのオフィス内に響く凛(りん)の声。
本人は小声で喋っているつもりなんだろうけど、恐らく近くにいた人には聞こえていただろう。
「ちょっ…声大きい!とりあえず移動しよう!」
庭園のベンチに腰掛けてお弁当を開くと、凛は好奇心旺盛な子供のように顔を覗き込んできた。
「で?告白されたんでしょ?烏丸くんに!」
「どこから聞いたの……」
「社内で知らない人居ないんじゃない?イケメンって有名な烏丸くんがフラれたって」
「う……」
「ありえないよ!あんなイケメンに告られておいて断るとか!」
「彼氏…がいるんだよね」
「え?!嘘誰?初めて聞いた……」
あの日から沢山の時間が過ぎた。
謙信様の隣に帰りたいと願うのに、新しい友達が増えて大切な人も増えた。
「今は会えないの。紹介したかったな」
「そうなんだ~次会えたら紹介してね!」
「うん……」
ワームホールが出るのを待っているうちに四つの季節が過ぎ、一年という月日が経とうとしていた。
謙信様の声を忘れた日はない。
お姿を思い浮かべなかった日はない。
だけど謙信様の温もりだけは、どんどん記憶が薄れていく。
涙が枯れるほど泣いたのに、神様のイタズラは随分と意地悪なものだった。
それでも私の気持ちが謙信様から動く事は絶対に無い。
「はぁ…今日も無理か」
踵を返し、境内を抜けて家へと向かう。
帰り道に新しく出来た雑貨屋へと入った。
店内を見て回ると、あるアクセサリーが目に止まった。
「これ……」