第13章 ✼碇草✼
「立てます!自分で歩けるので下ろしてください.......!」
「何を顔を赤くしている。いつもの事だろう」
確かに今までも急に人前でキスしたり抱き上げたりする事はあったけど、今は皆の視線が痛い。
「二人共早く行ってください。俺たちは何を見せられてるんですか」
幸村の言葉に、謙信様は小さく笑って歩き出した。
「お前も早くいい女を見つけろ」
「な.......っ!余計なお世話ですよ!出来ても絶対言わねぇ!」
頭の後ろで、幸村が皆にからかわれている声がした。
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「けん.......っ!んんっ.......んぅ.......」
謙信様の部屋に連れていかれると、すぐに押し倒されて唇を奪われた。
「やっとお前に触れられる.......」
私を抱きしめながら肩口に顔を埋めた謙信様は、大きなため息をついた。
「記憶が戻ってから全然お前に触れていない。これでは俺が死んでしまう」
確かに、謙信様は記憶が戻ってからも現代に行って、その後は私にお城を見せてくれて、今だって皆を集めて今後の事を説明して.......明日からは根城を移すための準備がある。
記憶を無くしてただでさえ疲れていたのに、ハードスケジュールだ。
もちろんその間に私と夜を共にすることも出来なかった。
「お疲れ様です、謙信様」
それを顔に出さないから、私が少しでも癒しになってあげたい。
謙信様がいつも私にしてくれているように頭を撫でてみると、謙信様の体から力が抜けたような感じがした。
「ありがとう.......疲れた」
「謙信様がそんな事言うなんて珍しいですね」
「お前になら何を言ってもいいのだろう?」
「....っ.......はい!」
疲れた時には疲れたと言ってほしい。
ただそれだけの事だけど、ずっと人の上に立ってきた謙信様にとってそれがどれだけ難しい事かは分かっていた。
だからこそ、また一つ私に心を開いてくれたような気がして嬉しい。