第13章 ✼碇草✼
「話を戻すが、俺は結を妻とする」
「おめでとうございます!結様、謙信様!」
「ありがとうございます、皆さん」
「祝言はお前たちが作ったあの城で行う。近いうちに上杉は根城をそこに移す。準備をしておけ」
「はい!あの城が遂に根城になるのですね……!」
新生活にウキウキしている家臣たちは、遠足前の子供みたいでちょっとだけ可愛いと思ってしまった。
「そうだ。あと一つ言い忘れていた。景持、来い」
景持くんの話は私も何も聞いていない。
一体何の話だろう。
「甘粕景持を俺の傍に置く事にした。軍の指揮も任せる。それ相応の領地も与える。実力があれば今の身分など関係ない。覚えておけ」
「よろしくお願いします……!」
(景持くんってここぞという時はしっかりしてるのに普段は年相応の普通の男の子だよね……)
女の子はこういう子にギャップ萌えするんだろうか。
確かにちょっと可愛いけど。
「景持……!俺が知らない間に良い身分になりやがって……負けねえぞ!」
「俺も明日から鍛錬頑張らないとな」
皆景持くんのおかげでやる気にみなぎっている。
(謙信様、理想の上司みたい……)
こうしてみると皆が謙信様についてくる理由が分かる気がする。
「謙信様、そうと決まれば宴を!おめでたい事ですし!」
「祝言までは何があるか分からん。俺達の事を祝うのは祝言が終わってからだ。景持の宴は明日にしろ。今日は結が足りん」
「は.......?!」
今はそういう雰囲気だっただろうか。
私たちの婚約と景持くんの昇進を祝っている最中だったはずだ。
なのにこの人は不意打ちで爆弾発言をする。
「あとは皆で景持を祝ってやれ。結、行くぞ」
「えっ、あの.......」
正式に婚約すると言ったからか、急に謙信様の手を取るのが恥ずかしくなってくる。
(しかも皆凄い見てるし.......!)
「.......?どうした結、立てないのか」
しばらくその場で固まっていると、謙信様は軽々と私を抱き上げた。