第13章 ✼碇草✼
「そういえば謙信様、ひとつ聞いてもいですか?」
「何だ」
「どうして景持くんを傍に?」
謙信様と一緒にいる時間が多かった私ですら、二人が話しているのはあまり見た事が無い。
私は戦に行かないから、景持くんがどれくらい強いのかも分からない。謙信様が傍に置く程に強いのだろうか。
「景持は俺が記憶を無くしている時からずっと、暇を見つけては俺に手合わせがしたいと言ってきた。才能も持っている。あいつはこれからもっと強くなるだろう」
「謙信様に直々にですか.......?!どうしてそこまでして.......」
普通の家臣の方は謙信様に話しかけるのにも緊張しているのに、総大将に手合わせなんて.......。
そんな事するのは佐助くんと幸村くらいだと思っていた。まぁ二人は斬りかかられているだけだけど.......。
「俺の記憶が戻らなかった時には自分が結を守れるように、と思っていたらしい。御館様の誰よりも大切な人だから」
「えっ.......」
言われてみれば、私が安土城に帰るまで、景持くんは凄く私の事を気にかけてくれて、話を聞いてくれた。
「俺のために戦ってくれる者は他にもいるが、俺と結に忠誠を誓ったあいつなら信頼できると思った。それだけだ。それより結」
謙信様は体を起こして、私の首筋に舌を這わせた。
「えっ、ちょっ.......!」
「二人きりの時に他の男の名前を出すとはお前も胆が座っているな」
「謙信様も話してくれたじゃないですか.......!」
「知らんな。だいたいあいつが本当に俺のためだけに結を守ろうとしたわけが無いだろう」
「どういう事ですか?」
「お前は本当に鈍感だから困る。もう他の男の名前は出さずに俺の事だけ考えて感じていろ」