第13章 ✼碇草✼
「お前は戦が好きか?」
信玄様が問いかける。
「好き.......ではありません。ですが生まれた時から夜の世には戦がありました。それに疑問を持ったこともありません」
「俺は今まで織田信長を倒す事を目的として戦ってきた。どうしても許せない男だったからな。でもこれからはそうではなく戦の無い平和な世を作りたいと思っている」
「戦がなくなる日など……来るのですか?」
「来る」
そう断言したのは信玄様ではなく謙信様だった。
「俺は戦が好きだったが、結と出会ってからは生きて帰ってきたいと思うようになった。平和な世は必ず来る。これはそのための選択だ」
決して信玄様と戦をしたいわけじゃない。
ただ、今よりもっといい世の中を作るために。そんな謙信様の声は皆の心に届いただろうか。
「俺はもう信長を殺すために生きている訳じゃない。もし付いて来れない者がいるなら俺は何も言わない。でも俺を信じてほしい」
「お前と、お前たちの家族が安心して暮らせる世を俺達が作ろう。だから力を貸してくれ」
謙信様と信玄様は二人そろって家臣たちに頭を下げた。
「私からも……お願いします」
生まれた時から戦があって、大切な人を殺される。
それが当たり前のこの時代で戦の無い世の無い世の中を作ろうなんて夢のような話かもしれない。
歴史上ではそれを実現させたのは家康だった。
でも今は謙信様も信玄様もついている。
皆で協力すれば、もっと早くそれを実現させることができるかもしれない。
(お願い、届いて……)
「俺は答えるまでも無いです。さっきも言いましたけど、どこまでも謙信様に……謙信様と結様についていきます」
「景持くん……」
「俺も!」
「俺もついていきます、信玄様!」
「謙信様と結様に一生お仕えします!」
……想いは届いたようだ。
まだまだ道は長いけれど、一歩前に進めたような、そんな気がした。