第12章 ✼猩々木✼
「平和な世の中にするには犠牲が出る。戦もする。お前を悲しませてしまう事もあるだろう。だけど、結。ここで神に誓おう」
──俺は絶対に結を残して死んだりしない。
辛いことがあれば、その傷を一緒に癒そう。
そして沢山笑おう。
俺の命はお前と幸せになるために使う。
「っ……」
零れ落ちた涙が、私の手を握る謙信様の手の甲に落ちた。
──今ここで、永遠を誓う。
だから……
謙信様が跪いて手の甲を撫でる。
そして冷たい感触が指に伝わった。
俺と結婚してください
「うそ……どうして…」
愛の囁きと共に、薬指で銀色のリングが光る。
「この時代ではこう言うのだろう?指輪も佐助に聞いて、作らせていたのだ。あの時代では少々大変だったがな」
指輪にキスをされ、夢ではないと実感した。
私の為に、指輪を作ってくれた。
今まで十分すぎるほどの物を貰ってきたのに、謙信様はもっと私を幸せにしてくれる。
「謙信様っ……大好きです…っ…謙信様っ…!」
どう言葉にすればいいのか分からなくて、子供のように泣きじゃくりながら謙信様に抱きつくと、謙信様は笑った。
「わかった、わかったから。そんなに泣くな」
私を慰めようとして頭を撫でてくれる事にすら幸せを感じて、また涙が溢れてきてしまう。
「頼むから笑ってくれ、結」
体を抱き上げられて目を開けると、優しく微笑んでいる謙信様と目が合った。
「俺にも付けてくれないか」
差し出されたのはお揃いのデザインが施された金色のリング。