第11章 ✼薺✼
昔の記憶を頼りに、謙信様の手を引いて歩いていく。
暫く二人で歩いて、並木道に来た時、突然辺りが明るくなった。
「これは……何だ?」
「よかった。ちょうど見れましたね」
私が謙信様に見せたかったのは、ちょうどこの時間から点灯するイルミネーションだった。
戦国時代ではまだ今日は何の日でもない。
でも、この時代では特別な日
「今日は……クリスマスなんです」
「くりすます?」
「詳しくは私もよく分からないんですけど、この日は贈り物をしたり、皆大切な人と過ごすんです」
色とりどりに輝くイルミネーションの中には、幸せそうに笑う恋人たちの姿が沢山あった。
まさかこの時代でクリスマスを謙信様と過ごせるとは思ってなかったけれど、これもクリスマスプレゼントなのかもしれない。
「このような景色は初めて見た。とても…綺麗だ」
「でしょう?あっちにクリスマスツリーもあるみたいですよ!」
ライトアップされた並木道の先にあったのは、大きなクリスマスツリー。
「この時代は何でも美しいものに変えてしまうのだな……」
戦国時代から来た謙信様には意味が分からない光景だろうけど、その瞳は子供のようにきらきらと輝いていた。
「結……?」
名前を呼ばれたのは謙信様の声……じゃない。
向こう側から歩いてくるのはこれまた見慣れた姿…と知らない人が一人。
「叶多……!?」
叶多、という言葉を聞いた謙信様が反応して、私の腰を引き寄せる。
「何でこの時代に……てか、もしかして隣の人って」
「すぐに帰るんだけど色々あって今日だけこっちに来てるの」
「そっか…ごめん、花。ちょっと二人と話してもいい?」
「もちろん。ここら辺のお店でも見てるから終わったら連絡して」
叶多と一緒に居た花、と呼ばれた可愛らしい女性は、彼多に笑みを向けて去っていった。